長寿とテロメアと好奇心 3.5.6

テロメア（telo mere）とは寿命（細胞分裂の回数）を決めているといわれる真核細胞の染色体の末端部分であり、生命の回数券とも呼ばれています。

テロメアは細胞分裂のたびに短くなるため、現在、人の寿命は約120歳前後が限度と考えられているが、ノーベル医学生理学賞受賞のエリザベス・ブラックバーン医師は、日常の生活習慣を改善することで、健康寿命を伸ばし、疾患期間を縮める工夫を教えてくれています。

エリザベス・ブラックバーン医師の講演

この動画は、テロメア・エフェクトの一部要約です。

ちょっと先を行く、都市伝説レベルの話

シンギュラリティ（人工知能（AI）が人類の知能を超える転換点（技術的特異点））がくると提唱したレイ・カーツワイル氏も人の寿命の延長や冷凍保存に興味を示しているとか。

レイ・カーツワイル氏インタビュー

少しぶっ飛んだ、都市伝説レベルの話はさておいて、健康寿命を伸ばす工夫がテロメア・エフェクトには書かれているので、メモ的に抄録しておきます。

ジャンヌ・カルマンさんの真偽はさておき、

人間の体には、自己複製する細胞が随所にあり、これらの細胞が何度も分裂を繰り返すことで、私たちの体は健康を保つ。

老化した細胞からは炎症誘発性の物質が漏れ出す可能性もあり、その結果、人は痛みに弱くなったり、慢性疾患にかかりやすくなったりする。そして最後、老化細胞の多くはあるがあらかじめプログラムされていた死を迎える。

この先の年月を素晴らしく健康に過ごせるなら、その時間で何ができるだろう？と自分の胸に楽しく問いかけることだ。

テロメアの、そして細胞の回復のための1歩は今すぐにでも始められる。自分が今していることに意識を集中できる人は、そうでない人に比べてテロメアが長いと言う結果が、ある調査から出ている。

テロメアの心得

○ テロメアを維持するには、小さなことにはこだわらない一方で、有害なストレスには注意すること。有害なストレスとは長期に及ぶ1重度のストレスだ。そうしたストレスはテロメラーゼを抑え、テロメアを短くする危険がある。

○ テロメアの短縮は免疫機能を鈍らせ、軽い風邪にも感染しやすくする。

○（特にCD8-T細胞の）テロメアの短縮は炎症を促進する。炎症がゆっくり広がっていくと体の組織が変性し加齢に伴う病気につながる危険がある。

○ ストレスを消し去ることはできない。だが、ストレスフルな出来事に前向きに対処するように努力すれば、体においても心においても、ストレスへの耐性が高まっていく。

打たれ強いレジリエントな思考を作るもう一つのテクニックが、自己を慈しむこと、すなわち「セルフ・コンパッション」だ。これは、ほかならぬ自分自身に向けた優しさであり、「自分は1人で苦しんでいるのではない」と理解することだ。

私（Elissa）はダライ・ラマ14世がどのように目覚めるかを聞いて深い感銘を受けたことがある。「毎日、目覚める時、今日も自分が生きている事は幸運だと思いましょう。自分は人生の貴重な時間を手にしており、それを無駄に使ってはいけないのだと」。永遠にこうした考えに至らず、人生を高める視点に気づかずに生きる人は少なくない。

テロメアの心得

○ 自分の思考の癖を知る事は、幸福のための重要な1歩だ。敵対心、悲観、思考の抑圧、反芻などのネガティブな思考スタイルは決して珍しいものではないが、それらは要らぬ悩みを引き起こす原因になる。幸いにもそれらの癖は、努力で調整できる。

○ 人生の目的意識、楽観、ユニタスク、マインドフルネス、セルフ・コンパッション等を通してストレスへの耐性を高めれば、ネガティブな考えや過剰なストレス反応を抑えることができる。

○ ネガティブな思考を持つと、テロメアが短くなる傾向がある。しかし、ストレスへの耐性を高める習慣を実践すれば、テロメアの安定はもちろん、テロメアを長くすることさえできる可能性がある。

テロメアの心得

○ 大きなストレスやうつ病、不安感は「用量反応」的にテロメアの短縮に結びつく。だが、幸いにも大方の場合、こうした個人的な歴史の影響は消すことが可能だ。何か重要な出来事を経験しても、5年後にはその痕跡は消えているものだ。

○ ミトコンドリアの働きもまた、重度のストレスやうつ病によってダメージを受ける。だが、少なくともマウスに関する限り、そうしたダメージは回復が可能だ。

○ うつ病や不安を引き起こす認知上の仕組みの1つが、ネガティブ思考の誇張された形ー

つまりネガティブな気持ちを受け入れられず、それを過剰に避け続けることだ。うつ病の1つの特徴は半数を始めとする"ドゥーイング・モード"の思考で、それはかえって悪循環を作る。

○ マインドフルネスを土台にした介入は人々の陥りがちな過剰なドゥーイング・モードをビーイング・モードに切り替え、思考の反芻に歯止めをかける手助けをする。次のリニューアル・ラボの「3分間の呼吸休憩」を参照しよう。

人間が加齢に伴い悪性腫瘍などの病気にかかりやすくなる背景には、免疫老化と言う重要なプロセスがある。免疫系の老化が起きると、炎症性サイトカインが高濃度で体を循環する。そしてサイトカインの分子は、突風にあおられた炎のように全身に炎症を広げる危険がある。サイトカインはさらにT細胞の老化のスピードを速め、そのせいで、T細胞は病気と闘うと言う本来の役目を果たせなくなる。老化した免疫細胞の1部はすでに説明したように、悪玉に変化さえする。免疫細胞が老化したせいで、厄介な病原体に体がすぐ負けるようになり、下手をすれば入院と言う事態まで起きる。老化した免疫細胞が体内に大量にあると、肺炎やインフルエンザの予防接種を受けても、ワクチンが効かずに発熱したり咳が出たりする可能性も高くなる。つまり、予防医療の恩恵を受けることも難しくなってしまうのだ。

　しかしながら、いわゆるカウチポテトの人々に比べると、定期的に運動する人は炎症性サイトカインの値が低く、予防接種がうまく働く確率も高い。そして免疫系も、より丈夫でいられる。免疫の老化は歳をとれば誰にでも起きる自然の現象だ。だが、運動する人はその現象が起きるのを、人生の1番最後の時まで引き伸ばせる可能性がある。運動と免疫学の研究者リチャード・シンプソンによれば「日々の運動が免疫系の働きを整え、免疫老化の開始を遅らせられる」ことがその他の証拠からも示されている。運動とは、免疫系を生物学的に若く保つための素晴らしい法則なのだ。

テロメアの心得

○ 運動する人のテロメアは、しない人に比べて長い。双子の場合でもこれは当てはまる。細胞の健康のためには、強めの有酸素運動が最適だ。

○ 運動は、細胞内のクリーンアップ・クルーに活力を与え、そのおかげで細胞内に分子のゴミが堆積しなくなる。ミトコンドリアの働きが高まり、フリーラジカルは少なくなる。

○ 激しい運動をしているアスリートは、体が非常に壮健で、代謝上も極めて健康で、長いテロメアを持っている。だが、彼らのテロメアは中程度の運動する人に比べて著しく長いわけではない。だから、テロメアのためだけなら極限的な運動を志す必要は無い。

○ 運動しすぎて燃え尽きた運動選手は、様々な肉体的不調に襲われる可能性がある。筋肉細胞の中のテロメアが短くなるのは、その症状の1つだ。

○ もしあなたがストレスの多い生活を送っているなら、運動は「すると良い」どころではなく「必須」だと思って欲しい。運動をすれば、ストレスによるテロメアの短縮を防ぐことができる。

テロメアの心得

○ 十分に睡眠をとれば、食欲も抑えられ、心も安定する。そしてテロメアの塩基対が失われる度合いは少なくなる。

○ テロメアは少なくとも7時間の睡眠を好むらしい。睡眠の質を向上させるには様々な方策が考えられるが、その一つが寝室に液晶機器を置かないと言うシンプルなしかし難しい方法だ。

○ 睡眠時無呼吸やいびきや不眠の作用を最小限にするように心がけよう。高齢になると特にこれらの症状は多くなる。不眠に襲われた時には、穏やかな思考で不安を和らげるように努めよう。重度の不眠には、認知行動療法が役に立つ。

テロメアの心得

○ テロメアのためには、体重ばかりを意識する必要は無い。そのかわりお腹の出っ張り具合やインスリン感受性を健康の指標として用いよう（インスリン感受性は、空腹時のインスリン値やグルコース値を医師に検査してもらえればすぐにわかる）。

○ カロリーばかり気にしすぎるのはストレスの元になるし、テロメアに影響を及ぼす可能性もある。

○ 糖分やグリセミック指数（血糖値指数。摂食後の血糖値上昇を示す）の低い食べ物や飲み物は、体の代謝上の健康を高めてくれる。体重そのものよりも重要なのはこちらの方だ

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テロメアの心得

○ 炎症、インスリン抵抗性、参加ストレスはあなたの敵だ。敵と戦うためには前述の「賢明な食のあり方」を導入し、野菜や果物、全粒穀物、豆類、マメ科植物、ナッツ類、種子類のほか、低脂肪で質の高いタンパク質を積極的に摂取すること。これは、別名「地中海式」の食生活とも呼ばれる。

○ オメガ3脂肪酸を含むサケやマグロなどの魚、葉物野菜、亜麻仁、亜麻仁油を摂取すること。サプリメントで摂取するなら、藻類をベースにしたものを選ぼう。

○ レッドミート（特に加工したもの）は極力控える。週に数日はベジタリアンの食生活を試みても良い。あなたの細胞にも循環にも、きっとプラスになる。

○ 砂糖の入っている食べ物や飲み物、精製食品などは避ける。

健康的な食べ物を積極的に食生活に取り入れるのは素晴らしいことだが、もしかしたらそれ以上に重要なのは、加工食品や砂糖の入った食品、そしてジャンクフードなど、細胞の敵に餌をやるような食習慣を止めることだ。